よむ・みる・わかる・役に立つ!ねじソムリエの「ねじのちょっといい話」 第2話 ねじの困りごとを解決する7つの知恵
よむ・みる・わかる・役に立つ!ねじソムリエの「ねじのちょっといい話」 第2話 ねじの困りごとを解決する7つの知恵
Part 2ねじが動かない、
という「困った!?」
ねじを締めたら途中で固まって動かない。外そうと力を込めて回したら、ねじが破損してしまった。DIYが好きな人なら、こんな経験がきっとあることでしょう。ねじ山が動かなくなることを、ねじの世界では「かじり(焼付き)」と呼び、製品を駄目にしてしまう困りごとのひとつです。ねじ山の焼付きはステンレスのねじに多い現象で、大きく分けて2つの原因があります。
錆びにくいという特徴をもつステンレスのねじには、熱伝導率が鉄製のものに比べ約1/3と小さいため摩擦熱を溜めやすいという特性があります。また、熱膨張率係数が鉄製のものに比べ約1.5倍と高く、膨らみやすいという性質もあります。そのため、ねじを速く締結させようとすると、熱を持って膨張し、ねじが固着しやすくなってしまうため、かじりが発生してしまうのです。
ステンレス製のねじに限らず鉄製のねじでも焼付きが起こるケースがあります。この場合の原因は、ねじに付着した異物。切粉などの異物が付着したまま締め付けたり、ねじ山に打痕があるねじを締め付けたりした場合、ねじ山の摩擦によって焼付きを起こし、ねじが動かなくなってしまうのです。
かじりを防ぐには、ゆっくりしたスピードで締める、ねじ用の潤滑剤を使用する、といった対策が有効です。万が一かじってしまった場合、無理に外そうとするとボルトや締結する相手のモノを破損させてしまうことがあります。潤滑剤などを使用し、丁寧に外すようにしましょう。
Part 3十字穴が壊れ回せない、
という「困った!?」
ねじの頭に作られている十字穴などのくぼみのことを「リセス」と呼び、ドライバーなどの工具でねじを回すために使います。ドライバーでねじを締める場合、押す力と回す力は7:3が良いとされています。押し付ける力が弱いと工具の先端が浮かび上がってしまい、リセスから工具が外れるカムアウトという現象を引き起こしてしまい、上手くねじを回すことができません。電動ドライバーでねじを締めようとした時、早くねじを回そうとするあまりドライバービットだけが空転してしまい、ねじのリセスをガリガリ削ってしまったという経験がある方も多いことでしょう。この原因は、十字穴の形状にあります。下図のように、十字穴は円錐状に先細りのテーパーになっているため、ビットの先端から伝わった力が、工具の先端を浮かび上がらせる力に変わってしまい、工具を押しつける力が弱いとカムアウトが発生してしまうのです。 また、下表に示すように、ねじの太さによって十字穴の大きさは異なります。ドライバーのサイズ選びを間違えると、リセスに入らない、隙間があるガタガタの状態になりカムアウトしやすくなる、といった状況が生まれます。ねじを回す際には、ドライバーの大きさにも注意が必要です。
基本的な対策としては、ねじに対して垂直に押し付けて工具を使用すること、そして、ドライバーの回転速度を調整することが重要です。インパクトドライバーを使う場合は、回転速度の調整が難しいため、特に注意が必要です。
Part 4ねじがクルクル回転して止まらない、
という「困った!?」
アルミやプラスチックなど柔らかい素材のねじの場合、ねじ穴が壊れて空転し、しっかり締結できないということがよく発生します。ねじを締め付けた際に、めねじのねじ山がおねじに負けて壊れてしまうというのが、その原因です。 おねじ自身でねじ山を作るのが、タッピンねじや木ねじです。これらのねじの場合、トルク(締め付ける力)が強すぎるとめねじのねじ山を壊してしまうので、締め付けの強さや素材の硬さなどを考慮して使用するようにしましょう。また、タッピンねじは繰り返しの使用には適しません。製品を分解・修理する時は、ねじの種類にも気を付けたいものです。
参考文献
- 1)
- ねじ・機械要素が一番わかる,大磯 義和 著
- 2)
- 絵とき「ねじ」基礎のきそ,門田 和雄 著
- 3)
- トラブルを未然に防ぐ ねじ設計法と保全対策,橋本 真治 著
- 4)
- ねじとばねから学ぶ! 設計者のための機械要素,國井 良昌 著
- 5)
- メイカーのための ねじのキホン,門田 和雄 著
- 6)
- 錆・腐食・防食のすべてがわかる事典,藤井 哲雄 監修、田村 正隆 発行