よむ・みる・わかる・役に立つ!ねじソムリエの「ねじのちょっといい話」第2話 ねじの困りごとを解決する7つの知恵
回転させて締めこむことでモノとモノを締結・固定、逆に緩めることで外すこともできる便利な道具=ねじ。でも実際に使ってみると、意外と困ってしまうこともあるのでは?みなさんが多く体験するであろう困りごとの中から、今回は代表例的な7つをチョイス!解決のための知恵を「ねじソムリエ」がわかりやすく解説します。
よむ・みる・わかる・役に立つ!ねじソムリエの「ねじのちょっといい話」第2話 ねじの困りごとを解決する7つの知恵
Part 1ねじがゆるんでしまう、という「困った!?」
締結した後にねじがゆるんでしまうと、使用箇所によっては事故につながる可能性も…。ゆるみは、ねじにとって「永遠の困りごと」のひとつです。ところで、ねじがなぜゆるんでしまうのか、その原因を知っていますか? 原因としては大きく「回転によるゆるみ」と「非回転によるゆるみ」の2種類があります。
ゆるむ原因はさまざまなだけに、2つのナットを同時に使うダブルナットや仮締め防止のための増締めといった一般的なゆるみ対策以外にも、製品や環境に合わせたゆるみ対策製品がさまざまなメーカーから開発・販売されています。
ボルトや小ねじなど、軸にねじ山が作られているねじを「おねじ」と呼びます。ゆるみ止めのためのおねじの工夫が、非対称のねじ山を作ること。非対称とすることでねじ山がたわみ、接触面が増えるため、衝撃や振動に強くなるのです。
ナットなど穴にねじ山が作られているねじを「めねじ」と呼びます。めねじのゆるみ止め製品は種類が多く、ナットに組み入れた板ばね(フリクションリング)の抵抗でゆるみを防止する製品、ねじ山にくさびの構造を取り入れゆるみを防止する製品などがあります。
写真のナットは、ナイロンのリングを組み入れたもの。ねじ山を傷つけることなく、振動に対してゆるみ止め効果を発揮する製品で、メンテナンスで外したい、ねじ山に傷をつけたくないといったニーズにマッチしています。エアコンの室外機など、みなさんの身近でもよく使われているものです。
座金(ワッシャー)は、ねじとモノ(締結する相手)との間に入れることで陥没によるゆるみを防止し、モノを傷つけない機能があります。製品によっては、あえて座面を傷つけることで製品との摩擦力を高め、ゆるみを防ぐ製品もあります。
ばねのゆるみ対策例としては、ばね座金(スプリングワッシャー)が一般的です。回転によるゆるみの軽減や、ねじの落下を防止する効果があります。ねじとは別個にバラで販売されていることが多いですが、平座金と一緒に組み込まれている「セムス」と呼ばれるねじも多く使われています。
ねじ山に接着剤(ロック剤)をつけて締めこむことでねじを固着させ、ねじの回転によるゆるみを防止します。接着剤にも種類があり、完全に固着して性能を発揮するためには、一定時間経過する必要があります。また、接着剤には使用期限があること、成分によって金属用とプラスチック用があるという点にも注意が必要です。
参考文献
- 1)
- ねじ・機械要素が一番わかる,大磯 義和 著
- 2)
- 絵とき「ねじ」基礎のきそ,門田 和雄 著
- 3)
- トラブルを未然に防ぐ ねじ設計法と保全対策,橋本 真治 著
- 4)
- ねじとばねから学ぶ! 設計者のための機械要素,國井 良昌 著
- 5)
- メイカーのための ねじのキホン,門田 和雄 著
- 6)
- 錆・腐食・防食のすべてがわかる事典,藤井 哲雄 監修、田村 正隆 発行